| ★☆★☆ 姑獲鳥の夏 ★☆★☆ | ||||
何もないのだよ、関口君。 昭和27年、東京、夏。事件は、小説家の関口巽が、古本屋の店主、 京極堂こと中禅寺秋彦に投げかけた、奇妙な質問で幕を開けた。関口は、 哲学、宗教、物理、民俗学などあらゆる知識を身につけた友人、京極堂を何かと頼り にしていた。巧みな弁舌で必ず論破されると知りながら、気が付くと今日も古本屋へ と続く眩暈坂を上って来たのだ。 「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君。」京極堂は、関口の異常な質 問に落ち着き払って答える。雑誌「稀譚月報」の編集者である京極堂の妹、敦子が、生活のために雑文もこなす関口に取材を依頼した怪しげな噂とは、雑司ヶ 谷の鬼子母神近くにある大病院、久遠寺医院の娘、梗子が妊娠20ヶ月 を迎 |
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| えたという話だった。それだけではない。梗子の夫が、1年半前に医院の密室か ら忽然と消え、以来ずっと行方不明だというのだ。京極堂は、失踪した夫が旧制高校 の一級先輩の牧朗だと気付き、胸騒ぎを覚える。そして、共通の友人である私立探偵、 榎木津礼二郎に相談するよう促す。 神保町にある榎木津の探偵事務所に向かう関口の足は重かった。関口は、凡人の理解 を遥かに超えた彼の言動に、いつも振り回されていたのだ。大財閥の御曹司である榎 木津は、他人の記憶が見えるという不思議な能力を持っていた。 榎木津の事務所でコトは急速に進展する。久遠寺梗子の姉・涼子が牧朗の行方を捜してほしいと依頼に来たのだ。関口は、涼子の儚げな美しさにひと 目で心を奪われ、彼女を助けたいと願う。 榎木津と関口は敦子を伴って、久遠寺医院を訪れる。院長の嘉親と妻の 菊乃、住み込みの医療助手の内藤、そして涼子に迎えられ、榎木津 と関口は、梗子が閉じこもっている書庫に案内される。扉が開いた瞬間、榎木津は「 薄気味の悪い…まるで…」と言ったきり、こらえきれずに床に崩折れる。中に踏 み込んだ関口が見たものは…。 |
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