☆★☆★☆★ 四日間の奇蹟  ★☆★☆★☆

今、最も優しい愛の四日間が始まる。

 狭い娯楽室にドヴォルザーク『新世界より「家路」』のピアノの旋律が響き渡る。一台のグランドピアノの前に座るのは心を閉ざし、想いを上手く伝えることが出来ない少女・千織。しかし、一度聞いた曲をどんなに難しいスコアであっても、弾くことが出来るという、その音楽的素質は天才的であった。
 演奏が終わる彼女を誰よりも大きな拍手で出迎えたのは如月(きさらぎ)敬輔。彼は将来を嘱望されたピアニストであった。2人の出会いは敬輔がロンドン留学中の5年前。暴漢に襲われた千織親子を助けようとして千織の命と引き換えに、左手の薬指の神経を断裂してしまう…その日を境に敬輔は2度と人前でピアノに触れることはなく、その手は白い手袋で隠されてしまった。そんな衝撃的な運命で出会った二人は帰国し、日本各地の施設を千織のピアノ演奏で慰問することに心の安らぎを覚えていた。
 キラキラと輝く海に浮かぶ島にある療養センターで働いているのは岩村真理子。一度嫁いだものの離縁され、そんな彼女の心の支えとなり、働く場所を世話したのは、同じ療養センターの医師・倉野順次と妻・和枝であった。彼らのやさしさのおかげで、今では患者たちに慕われ明るく働く真理子。
 敬輔と千織が真理子の働く療養センターを慰問に訪れた。皆が出迎える中で真理子は誰よりも2人の訪問を心待ちにしていた。真理子にとって敬輔は12年ぶりに再会を果たした、忘れられない初恋の人だったのだ。翌日、演奏会が終わり、中庭の風車の下で遊ぶ真理子と千織だったが、天候が急転し突然の落雷が2人を直撃する。傷を負った真理子の命の期限はあと四日。残酷な宣告がなされた時、彼らの前に信じられない奇蹟が起こった。